ピロリ菌陽性と言われたら?抗体検査の見方と受診の目安を医師が解説

ピロリ菌陽性と言われたときの受診の目安と検査の流れ

健康診断で「ピロリ菌陽性」と診断され、現在感染しているのか、過去の感染なのか、疑問や不安を感じていませんか?

この記事では、ピロリ菌抗体検査の結果を正しく理解するためのポイントを解説します。また、感染が確定した場合の精密検査から除菌治療、治療後のフォローアップまでを詳しくご紹介します。

国立がん研究センターによると、ピロリ菌感染は胃がんのリスクを高めるとされています。本記事を読むことで、ピロリ菌感染を放置するリスクを理解し、適切な治療へと進むための具体的なステップを把握できます。胃の健康を守るための、次の一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。

目次

「ピロリ菌抗体陽性」を正しく理解する3つのポイント

ピロリ菌抗体陽性という結果は、現在胃の中にピロリ菌がいる可能性、あるいは過去に感染したことがあるという重要なサインです。この結果を正しく理解し、適切な次のステップへ進むことが、胃の健康を守る上で大切になります。

抗体検査でわかること、わからないこと

抗体検査は、血液を採取し、体内にピロリ菌の抗体があるかを調べる検査です。この検査で「陽性」と判定された場合、現在ピロリ菌に感染しているか、あるいは過去に感染したことがあるということを示します。重要なのは、陽性であっても、必ずしも「今、胃の中に生きたピロリ菌がいる」とは限らない点です。

抗体とは、体がウイルスや細菌などの異物(抗原)と戦った後に作られるタンパク質で、感染が治癒した後も体内に残ることがあります。そのため、たとえ現在ピロリ菌がいなくても、抗体だけが陽性として検出されることもあるのです。日本ヘリコバクター学会のQ&Aでも、抗体検査の結果だけでは現在の感染状況を正確に判断できないと説明されています。

したがって、抗体検査は「ピロリ菌感染の可能性」を示すスクリーニング検査(ふるい分け検査)と理解しましょう。現在の感染の有無を確定させるには、さらに別の検査が必要になります。

現在の感染の有無を確定させる必要性

ピロリ菌抗体陽性の場合、現在の感染の有無を確定させることが重要です。なぜなら、ピロリ菌の除菌治療は、現在感染している方にのみ適用されるからです。感染しているかどうかが確定しなければ、適切な治療方針を立てることができません。

国立がん研究センターも、ピロリ菌感染が胃がんのリスクを高めることから、感染の有無を知り、感染している場合には除菌を検討することを強く提言しています。除菌治療は、将来的な胃がん予防につながる大切な一歩となる可能性があります。

現在の感染の有無を確定させるための検査方法には、いくつかの種類があります。主な検査方法は次のとおりです。

  • 内視鏡を使わない検査
    • 尿素呼気試験: 検査薬を飲んでから、呼気(吐き出す息)を採取する検査です。
    • 便中抗原検査: 便の中にピロリ菌の抗原があるかを調べる検査です。
    • 尿検査: 抗体検査とは異なる種類の検査で、現在の感染の有無をより正確に判断できると考えられています。
  • 内視鏡を使う検査
    • 組織診断: 胃カメラで採取した胃の粘膜組織を使い、ピロリ菌がいるか顕微鏡で確認する検査です。
    • 培養検査: 胃の粘膜組織からピロリ菌を培養して確認する検査です。

これらの検査は、患者さんの状況や医師の判断により使い分けられます。

放置することで起こりうる胃の病気と胃がんのリスク

ピロリ菌感染を放置することは、慢性的な胃の不調や、より重篤な病気を引き起こす可能性があります。ピロリ菌は胃の粘膜に住み着く細菌で、胃の中にすみつき慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんなどの原因になることがあると説明されています。

ピロリ菌が胃の粘膜に住み着くと、胃炎が慢性的に続きます。この慢性的な炎症が長期にわたることで、胃の粘膜細胞が徐々に変化し、胃がんが発生しやすくなると考えられています。国立がん研究センターの解説でも、ピロリ菌感染は胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になるだけでなく、胃がんや一部の悪性リンパ腫の発生にも関連していると指摘されています。

そのため、ピロリ菌感染が判明した場合は、放置せずに早めに医師と相談し、適切な対応を検討することが、ご自身の胃の健康と将来的なリスクを減らすために非常に重要です。除菌治療は、胃がんのリスクを低減させることにつながりますが、除菌後も胃がんの可能性がゼロになるわけではないため、日本ヘリコバクター学会では定期的な胃内視鏡検査や胃がん検診の継続が大切だと呼びかけています。胃の痛みや不快感、食事がつかえるなどの症状がある場合は、検診を待たずに医療機関を受診するよう、国立がん研究センターも推奨しています。

ピロリ菌感染が確定したら?精密検査から除菌、治療後のフォローまで

ピロリ菌感染が確定した場合、現在の胃の状態を詳しく調べ、適切な除菌治療を行い、その後も定期的なフォローアップを続けることが、胃の健康維持と将来の胃がんリスク低減のために不可欠です。感染が判明したあとのステップを理解することで、不安なく治療を進めることにつながります。

精密検査の種類と保険適用の条件

ピロリ菌感染が確定したら、まずご自身の胃がどのような状態になっているかを詳しく把握するために精密検査を行います。この検査では、主に胃カメラ(内視鏡検査)が用いられます。胃カメラでは、胃の粘膜の状態を医師が直接確認し、炎症や潰瘍、がんの有無などを詳しく診断します。

胃カメラ検査の際には、ピロリ菌の有無を確定させるための生検(組織の一部を採取して調べる検査)や、胃がんのリスクを評価するための病理組織検査も同時に行われる場合があります。

これらの検査や除菌治療が保険適用となるには、いくつかの条件があります。例えば、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんといった病気が診断された場合です。また、自覚症状がなくても、胃カメラ検査で慢性胃炎や萎縮性胃炎と診断されれば、保険適用で検査や除菌治療を受けることができます。検査の必要性や保険適用については、消化器内科や胃腸内科を受診し、医師にご相談ください。

除菌治療の具体的な流れと成功率、副作用

ピロリ菌の除菌治療は、多くの場合1週間程度の内服薬で行われ、高い成功率が期待できる治療法です。治療では、胃酸の分泌を抑える薬と、2種類の抗菌薬を組み合わせた合計3種類の薬を、1日2回、7日間続けて服用します。この組み合わせによる初回除菌の成功率は、約80%から90%とされており、非常に効果的です。

もし初回で除菌ができなかった場合でも、薬の種類を変えて2回目の除菌治療を行うことが可能です。治療中に起こりうる副作用としては、軟便や下痢、味覚の変化(苦みを感じる)、軽い腹痛などがあります。これらの症状は一時的なものが多く、服薬を終えれば改善することがほとんどです。しかし、自己判断で服用を中断すると、除菌が失敗したり、薬が効きにくい薬剤耐性菌が生じたりする可能性があるため、必ず医師の指示に従って薬を最後まで飲み切ることが大切です。

除菌治療が成功したかどうかは、治療終了から1カ月以上の期間を空けてから、尿素呼気試験や便中抗原検査などで判定します。ここで特に知っておいていただきたいのは、除菌に成功しても胃がんのリスクがゼロになるわけではないという点です。ピロリ菌感染により慢性胃炎や萎縮性胃炎がすでに進行している場合は、胃がんのリスクが残るため、日本ヘリコバクターr学会では定期的な胃内視鏡検査や胃がん検診の継続が大切だと呼びかけています。日本消化器内視鏡学会も、除菌後も胃カメラ検査は必要であり、定期的な内視鏡検査が推奨されるとしています。症状がなくても、定期的な胃のチェックを続けることが、胃の健康維持につながります。

まとめ

ピロリ菌抗体陽性は、過去または現在の感染を示す大切なサインです。抗体検査だけでは今の感染の有無は確定できないため、精密検査で正確な診断を受けることが重要です。ピロリ菌感染を放置することは、慢性胃炎や胃がんのリスクを高める可能性があります。除菌治療は胃がんのリスクを低減する効果が期待できますが、除菌後もリスクがゼロになるわけではありません。そのため、定期的な胃カメラ検査などで継続的に胃の健康をチェックすることが大切です。少しでも不安を感じる場合は、消化器内科や胃腸内科を受診し、医師に相談してみましょう。

この記事は医師の監修のもと作成しています。

監修 和田 蔵人(医師)

監修者プロフィールはこちら

参考文献

  1. 日本ヘリコバクター学会. ピロリ菌に関するQ&A|ピロリ菌関連情報.
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. ヘリコバクター・ピロリ|一般の方へ.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がん検診について|一般の方へ.
  4. 日本消化器内視鏡学会. ピロリ菌を除菌しましたが、その後胃カメラ検査を受ける必要がありますか?
  5. 日本消化器内視鏡学会. 胃内視鏡検査は何年に1回(どのくらいの間隔で)受ければいいですか?
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