尿潜血と言われたら?原因と再検査の目安を医師が解説

尿潜血と言われたときの原因と再検査の目安

健康診断の結果に「尿潜血(+)」の文字を見つけ、「もしかして血尿?」「何か重い病気だったら…」と、不安な気持ちで情報を探している方も多いのではないでしょうか。実はその「尿潜血」、医学的には「血尿」とイコールではないことをご存じでしたか?

症状がないからと見過ごされがちですが、そのサインの裏には、腎臓や膀胱のがんなど、自覚症状なく進行する病気が隠れている可能性もゼロではありません。この記事では、「血尿診断ガイドライン2023」にも触れながら、尿潜血の本当の意味と放置するリスク、そして次に取るべき具体的な行動を医師が解説します。その不安を安心に変えるための、正しい知識を手に入れましょう。

目次

まずは確認 尿潜血と血尿の基本的な違い

健康診断で「尿潜血陽性」と指摘され、「血尿が出ているの?」「何か悪い病気だろうか?」と、ご不安な気持ちでこのページをご覧になっているかもしれません。

実は、「尿潜血」と「血尿」は似ているようで、医学的には意味が異なります。ご自身の状態を正しく理解し、過度に心配しすぎないためにも、まずはこの2つの基本的な違いから見ていきましょう。

尿潜血とは目に見えないレベルの血尿のこと

尿潜血とは、文字通り「尿に血液が潜んでいる」状態を指します。ただし、その量はごくわずかなため、ご自身の目で尿の色が赤い、茶色いといった変化に気づくことはまずありません。

健康診断などで行われるのは、試験紙を用いた簡易的な検査です。この試験紙は、血液の赤い色素である「ヘモグロビン」という成分に反応して色が変わります。

目に見えないほど微量の血液が混じっているだけで「陽性(+)」と判定されるため、自覚症状が何もないのに尿潜血を指摘されるケースがほとんどです。これはあくまで「血尿の疑い」をふるい分けるための第一段階のサインだとお考えください。

血尿との違いは尿中の赤血球の量

一方で「血尿」は、尿の中に「赤血球」という血液の細胞そのものが混ざっている状態を指します。血尿は、見た目でわかるかどうかによって、次の2種類に分けられます。

  • 肉眼的血尿
    目で見て明らかに尿が赤い、茶色い、あるいはコーラのような色だとわかる状態です。
  • 顕微鏡的血尿
    尿の色は正常に見えますが、病院で尿を顕微鏡で詳しく調べたときに、一定数以上の赤血球が確認される状態です。

日本腎臓学会などが定める「血尿診断ガイドライン2023」では、顕微鏡を400倍に拡大した際、一つの視野に赤血球が5個以上見える場合を「顕微鏡的血尿」と定義しています。

つまり、健診でわかる「尿潜血」はあくまで入り口の検査です。本当に治療の必要がある「血尿」かどうかを確定させるためには、病院で顕微鏡を使った精密検査(尿沈渣検査)を受ける必要があります。

種類見た目の色確認方法
尿潜血正常(黄色~淡黄色)尿試験紙(ヘモグロビンに反応)
顕微鏡的血尿正常(黄色~淡黄色)顕微鏡検査(赤血球を確認)
肉眼的血尿赤色、褐色、コーラ色など肉眼

健康診断の結果「+」「++」「+++」の意味と緊急度

健康診断の結果用紙に書かれた「+」の記号。これを見て「何かの病気だろうか」と、心穏やかでいられなくなるのは当然のことです。

この記号は、尿に目に見えないレベルの血液がどの程度混じっているかを示す目安です。数が多くなるほど、より詳しい検査の必要性が高まります。それぞれの記号が持つ意味と、次にとるべき行動について見ていきましょう。

「+(陽性)」は再検査で経過観察することも

尿潜血の結果が「+(プラス)」ひとつだった場合、その多くは病気が原因ではない一過性のものです。

私たちの体は非常にデリケートで、下記のようなことでも尿潜血が陽性になることがあります。

  • マラソンなどの激しい運動をした後
  • 仕事の疲れや精神的なストレスがたまっている時
  • 月経(生理)の前後やその期間中
  • 風邪などで熱が出ている時

これらの場合、尿にわずかに血液が混じることがありますが、体の状態が落ち着けば自然に消えていきます。

まずは慌てずに生活を整え、体調の良い日を選んで再検査を受けてみましょう。再検査で「異常なし」となれば、過度に心配する必要はありません。ただし、再検査でも繰り返し「+」が出る場合は、体が発する何らかのサインかもしれませんので、一度医療機関へご相談ください。

「++」「+++」は精密検査を推奨

結果が「++」や「+++」だった場合は、「+」の時よりも慎重な対応が必要です。これは尿に混じっている血液成分の量が多く、腎臓や尿路(尿管、膀胱、尿道)に何らかの病気が隠れている可能性が高まっていることを示唆します。

たとえ自覚症状がなくても、放置するのは望ましくありません。日本腎臓学会などが定める「血尿診断ガイドライン2023」でも、尿中に一定数以上の赤血球が確認された場合は、原因を特定するための精密検査を受けることが強く推奨されています。

特に、年齢が高い方や喫煙歴がある方などは、膀胱がんなどのリスクも考慮し、より慎重な評価が必要となることがあります。

「++」や「+++」という結果は、不安を煽るものではなく、ご自身の体を詳しく調べる良い機会を与えてくれた「お知らせ」です。早期に原因を発見し適切な対応をとることが、ご自身の安心と将来の健康につながります。まずは専門の医療機関を受診し、どのような検査が必要か相談しましょう。

尿潜血で考えられる原因一覧

健康診断で「尿潜血」を指摘されても、必ずしも重篤な病気が隠れているわけではありません。原因は、心配のいらない一時的なものから、詳しく調べるべき病気まで実にさまざまです。

大きく分けると、尿が作られてから排出されるまでの「どこ」で血液が混じったのかによって、原因を推測していくことができます。

腎臓の病気(糸球体腎炎など)

まず考えられるのが、血液をろ過して尿を作る「フィルター」の役割を担う、腎臓そのもののトラブルです。

腎臓の中には「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる、毛細血管が集まった小さな球があります。ここで血液をこして尿を作るのですが、この糸球体に炎症が起きるとフィルターの網目が壊れ、本来は通過しないはずの赤血球が尿の中へ漏れ出てしまうのです。

この代表例が「糸球体腎炎」や「IgA腎症」といった病気です。 特徴的なのは、精密検査で尿中の赤血球を見ると、フィルターの網目を無理やり通り抜けてきたために、形がいびつに変形していることが多い点です。これは「糸球体性血尿」と呼ばれ、腎臓からの出血を疑う重要なサインとなります。

多くの場合、自覚症状はほとんどありません。しかし、放置すると腎機能が徐々に低下する恐れがあるため、尿潜血とあわせて「たんぱく尿」も陽性だった場合は、腎臓内科での詳しい検査が推奨されます。

尿路の病気(膀胱炎、尿路結石など)

腎臓で作られた尿は、尿管→膀胱→尿道という「尿の通り道(=尿路)」を通って体外へ排出されます。この尿路のどこかに炎症や結石などがあり、粘膜が傷つくことでも出血が起こります。

腎臓からの出血と違い、尿路からの出血では赤血球は変形せず、きれいな形のまま出てくるのが特徴です。これを「非糸球体性血尿」と呼び、泌尿器科が専門とする領域の病気が考えられます。

  • 膀胱炎・腎盂腎炎
    細菌感染による炎症です。頻尿や排尿時の痛み、残尿感といった症状を伴うことが多くあります。
  • 尿路結石
    尿の成分が固まった石が尿路を傷つけます。突然の激しい腰痛やわき腹の痛みが特徴です。
  • 前立腺炎
    男性特有の病気で、頻尿や排尿時の不快感を伴います。

このように、尿潜血以外に何らかの症状がある場合は、原因を特定しやすいケースも少なくありません。

頻度は高くありませんが、尿潜血をきっかけに腎臓や尿路のがんが見つかることもあります。特に、痛みなどの自覚症状がまったくないのに尿潜血が続く場合には、慎重な検査が必要です。

考えられる病気には、腎細胞がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がんなどがあります。 「血尿診断ガイドライン2023」では、年齢、性別、喫煙歴などから尿路上皮がん(膀胱がんや尿管がんなど)のリスクを評価し、必要に応じて膀胱鏡などの精密検査を行うことが推奨されています。

特に長期間タバコを吸っている方は、リスクが高まることが知られています。 症状がないからと放置せず、尿潜血という体からのサインを見逃さないことが、これらの病気の早期発見につながります。

病気ではない一過性の原因(激しい運動、生理、ストレス)

尿潜血は、病気以外のささいなきっかけで陽性になることも少なくありません。

  • 激しい運動
    マラソンなど体に負荷がかかる運動の後に、一時的に腎臓の血流が変化して尿潜血が出ることがあります。
  • 月経(生理)
    検査時に経血がわずかに混入するだけで陽性になります。
  • 発熱やストレス、疲労
    体が弱っている時に一時的に陽性になることがあります。
  • 一部のワクチン接種後
    新型コロナウイルスmRNAワクチン接種後に、一時的に肉眼でもわかる血尿が出ることが報告されています。その多くは一過性ですが、IgA腎症などがもともと隠れている場合もあるため、続く場合は腎臓内科での評価が勧められます。

これらの多くは、体調が回復してから再検査をすれば陰性になります。しかし、「きっと一時的なものだろう」とご自身で判断してしまうのは危険です。繰り返し陽性になる場合は、一度医療機関できちんと原因を調べてもらうことが大切です。

症状がないのに尿潜血陽性でも大丈夫?

健康診断などで「尿潜血陽性」と指摘されても、痛みなどの症状がないと「きっと大丈夫だろう」と、つい後回しにしてしまいがちです。

しかし、症状がないからといって安心はできません。 尿潜血は、からだの内部で起きているかもしれない問題を知らせる、大切なサインなのです。

自覚症状がなくても重大な病気が隠れていることも

尿潜血陽性という結果が出ても、特に体に変化がないと「しばらく様子を見よう」と思われるかもしれません。しかし、症状がないからこそ、慎重な判断が求められます。

実は、腎臓や膀胱にできるがんの初期段階では、痛みなどの自覚症状がほとんどなく、尿潜血だけが唯一のサインであるケースも少なくありません。また、将来的に腎不全につながる恐れのある慢性的な腎臓の病気も、多くは静かに進行していきます。

特に注意したいのが、「血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいるからだろう」という自己判断です。 最新の「血尿診断ガイドライン2023」でも、これらの薬を服用中の方であっても、服用していない方と同様に精密検査を受ける必要があると提言されています。

症状がないから、薬を飲んでいるから、と見過ごしてしまうと、病気の発見が遅れてしまう可能性があります。尿潜血という体からの静かな警告を、決して見逃さないようにしましょう。

症状や所見に応じた受診先の選び方

「尿潜血で病院へ」と言われても、何科にかかればよいか迷うのは当然です。 尿潜血の原因を調べる場合、主に「泌尿器科」か「腎臓内科」が専門となります。どちらを受診すべきか、ご自身の状況に合わせて選びましょう。

尿の「通り道」が心配な方は【泌尿器科】へ

尿が作られてから排出されるまでの通り道(尿管、膀胱、尿道)や、男性の前立腺などに原因が疑われる場合は、泌尿器科が専門です。

<こんな症状・所見がある方>

  • 排尿時の痛みや違和感がある
  • トイレが近い、尿が残っている感じがする
  • わき腹や下腹部に痛みがある

尿を「作る工場」が心配な方は【腎臓内科】へ

血液をろ過して尿を作る「工場」の役割を担う、腎臓そのものの病気が疑われる場合は、腎臓内科の出番です。

<こんな症状・所見がある方>

  • 健康診断で、尿潜血と同時に「たんぱく尿」も指摘された
  • 血液検査で、腎機能の低下(eGFRの低下など)を指摘された
  • 顔や足にむくみがある

どちらを受診すべきか判断に迷う場合は、まずはお近くの内科やかかりつけ医にご相談ください。

病院で行う精密検査の具体的な内容と流れ

健康診断で尿潜血を指摘されると、「これからどんな検査をするのだろう?」と不安に感じることと思います。どのような検査が行われるのか、その具体的な流れを知っておくことで、少しでもご不安が和らぐかもしれません。

ここでは、尿潜血陽性となった際に、体に負担の少ない検査から順に行う精密検査の内容と流れを解説します。

尿沈渣(にょうちんさ)検査で赤血球の有無を確認

健康診断の尿潜血反応が「陽性」だった場合、まず最初に行うのが「尿沈渣(にょうちんさ)」という精密検査です。これは、健診の試験紙が反応した原因が、本当に「赤血球」なのかどうかを確定させるための、非常に重要なステップとなります。

検査は、提出していただいた尿を遠心分離機にかけ、尿中の固形成分(細胞や結晶など)を底に沈殿させ、それを顕微鏡で直接のぞいて観察するというものです。

この検査でわかることは、主に2つあります。

  1. 本当に「血尿」かどうか
    顕微鏡で尿を直接見て、赤血球が実際にどれくらい存在するかを数えます。「血尿診断ガイドライン2023」では、顕微鏡を400倍に拡大した際、一つの視野に赤血球が5個以上見える場合を「顕微鏡的血尿」と定義しています。この基準を超えて初めて、「血尿」と確定診断されるのです。
  2. どこから出血しているかのヒント
    赤血球の「形」を詳しく観察することも、この検査の重要な目的です。
    • 変形した赤血球が多い:腎臓のフィルター(糸球体)を無理やり通り抜けてきた可能性を示唆します(=糸球体性血尿)。
    • きれいな形の赤血球が多い:腎臓より下流の尿路(尿管、膀胱、尿道)で出血している可能性を示唆します(=非糸球体性血尿)。

このように、尿沈渣検査は血尿の有無だけでなく、出血源を推測し、次に進むべき診療科(腎臓内科か泌尿器科か)を決めるための道しるべにもなります。検査は通常の尿検査と同じで、痛みは一切ありません。

超音波(エコー)検査で腎臓や膀胱の形をチェック

尿沈渣検査で血尿が確認された場合、次に出血源を画像で探るために行われることが多いのが「超音波(エコー)検査」です。お腹にゼリーを塗り、超音波を発する器具を当てるだけで、体の中の様子をリアルタイムで観察できます。

この検査では、主に尿が作られてから溜まるまでの臓器である腎臓や膀胱を観察し、以下のような異常がないかを丁寧にチェックします。

  • 結石の有無:腎臓や膀胱、尿管などに尿路結石が隠れていないか。
  • 腫瘍(できもの)の有無:腎細胞がんや膀胱がんといった腫瘍性の病変がないか。
  • 形の異常:腎臓の腫れ(水腎症)や、膀胱の壁が厚くなっていないかなど。

超音波検査は放射線による被ばくの心配がなく、痛みも伴わないため、繰り返し行える安全な検査です。検査時間は10分から15分ほどで終わります。

より鮮明な画像を得るために、膀胱に尿が溜まった状態で検査を行うのが理想的です。そのため、検査の前に排尿を控えていただくようお願いすることがあります。

まとめ

今回は、健康診断などで「尿潜血」を指摘された際の、原因や再検査の目安について解説しました。

尿潜血は、痛みなどの自覚症状がないケースがほとんどです。そのため、「きっと大丈夫だろう」とご自身で判断しがちですが、そのサインの裏には腎臓や尿路の病気が隠れている可能性もあります。特に症状がないからこそ、放置せずに原因を調べることが大切です。

尿潜血という体からの知らせは、病気の早期発見につながる貴重なきっかけと捉えましょう。不安な気持ちを一人で抱え込まず、まずは泌尿器科や腎臓内科、あるいはかかりつけ医など、相談しやすい医療機関を受診してください。

この記事は医師の監修のもと作成しています。

監修 和田 蔵人(医師)

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参考文献

  • 血尿診断ガイドライン2023
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