ALT(GPT)が高いと言われたら?原因と下げる方法を医師が解説

ALT(GPT)が高い原因と下げる方法

健康診断の結果に記された「ALT(GPT)」の文字と、基準値を超える数値。これといった自覚症状がないため、「少し様子を見よう」と思っていませんか?しかしその数値は、”沈黙の臓器”と呼ばれるあなたの肝臓が、必死に送っている見過ごせないSOSサインかもしれません。

ALT値が高い状態を放置することは、将来の肝硬変や肝がんといった深刻な病気への道を開く可能性があります。実際、ある研究では基準値を超えた人の肝がんリスクは、基準値内の人に比べて約14倍にもなるという衝撃的な報告もあるのです。

この記事では、医師がALTが高くなる原因から、今日から自分で始められる生活改善策、病院での検査の流れまでを詳しく解説します。あなたの肝臓の未来を守るため、まずは体からのメッセージを正しく受け止めましょう。

目次

まずは確認 ALT(GPT)の基準値とあなたの数値が示す意味

健康診断の結果票に書かれた「ALT(GPT)」の文字と、基準値を超えた数値。これを見て、「自分のからだに何が起きているんだろう?」と不安に感じていらっしゃるかもしれません。

このALTという数値は、あなたの肝臓が今どんな状態にあるかを知るための、とても大切な“ものさし”です。ご自身の数値を基準値と照らし合わせ、からだが発しているサインを正しく受け止めましょう。

ALTとは?肝臓の健康状態を示す重要な指標

ALTは「アラニンアミノトランスフェラーゼ」という酵素の略称で、以前は「GPT」と呼ばれていました。このALTは、そのほとんどが肝臓の細胞の中に存在しています。

肝臓の細胞が元気なときは、ALTはその細胞の中にきちんと収まっています。 しかし、脂肪の蓄積やウイルス、アルコールなどの影響で肝細胞がダメージを受けて壊れると、中のALTが血液中にあふれ出てきてしまうのです。

つまり、血液検査でALTの数値が高いということは、「今、あなたの肝臓の細胞が壊れていますよ」という、からだからの直接的なメッセージに他なりません。

肝臓は、7〜8割の機能が失われるまで自覚症状がほとんど現れない「沈黙の臓器」です。だからこそ、症状がない段階で気づける血液検査の数値が、あなたの肝臓を守るための重要なカギとなります。

【年代・性別別】ALTの基準値一覧

ALTの基準値は検査機関によって若干異なりますが、日本人間ドック学会では「30 U/L以下」を健康な人の目標値としています。30を超えたら、肝臓に何らかの負担がかかっているサインと受け止めましょう。

ご自身の数値がどの段階にあるか、下の表で確認してみてください。

ALT(GPT)の数値判定の目安からだの状態と取るべき行動
30 U/L 以下ひとまず安心肝臓は健康な状態です。現在の生活習慣を続けましょう。
31~50 U/L肝臓からの注意信号肝臓に負担がかかり始めています。生活習慣を見直す良い機会です。一度、医療機関に相談することをおすすめします。
51 U/L 以上専門医への相談が必要肝臓に明らかなダメージが起きている可能性があります。放置せず、早めに消化器内科や肝臓内科を受診してください。

お手元にある健康診断の結果票にも基準値が記載されているはずですので、そちらも必ず確認してください。

数値が31〜50の場合の注意点

「少し基準値を超えただけ」「お酒を飲みすぎたかな」。そう思って、つい見過ごしてしまいがちなのが、31~50 U/Lという数値です。

結果票には「軽度異常」や「経過観察」と書かれているかもしれませんが、これは決して「問題ない」という意味ではありません。むしろ、肝臓があなたに送っている最初の「SOSサイン」と捉えるべきです。

この段階では、ほとんど自覚症状はありません。 しかし、この「少し高い」状態を何年も放置してしまうと、肝臓では静かに異変が進行します。肝細胞が壊れては修復されることを繰り返すうちに、組織がだんだん硬くなる「線維化」が進み、将来的に肝硬変や肝がんといった深刻な病気への道を開いてしまう可能性があるのです。

この「SOSサイン」の段階で原因を見つけ、生活習慣を改善できるかどうか。それが、数年後、数十年後のあなたの肝臓の未来を大きく左右します。まずは一度、かかりつけ医や消化器内科で相談してみましょう。

数値が51以上の場合に考えられること

ALTの数値が51 U/Lを超えている場合、それは肝臓の細胞がはっきりとダメージを受けていることを示す、見過ごすことのできないサインです。自覚症状がなくても、できるだけ早く医療機関を受診してください。

この数値の背景には、次のような原因が隠れている可能性があります。

  • 脂肪肝
  • ウイルス性肝炎
  • アルコールによる肝障害
  • 薬やサプリメントの影響

特に、数値が100 U/Lを超えている場合は肝臓の炎症が強く、300 U/Lを超えるような異常高値の場合は、急性肝炎など、より緊急性の高い状態も考えられます。

「症状がないから大丈夫」という自己判断は、最も危険です。 体の中では、あなたの気づかないところで病気が進行しているかもしれません。専門の医師による精密検査で原因を正確に突き止め、適切な対応を始めることが何よりも大切です。

ALTが高くなる主な原因

ALTの数値が高い、という結果は肝臓があなたに送っているSOSサインです。

その背景には、お酒の飲み過ぎというイメージだけでなく、食生活や思いもよらない病気、普段から口にしている薬やサプリメントなど、実にさまざまな原因が隠れています。

ご自身の生活習慣を振り返りながら、どの可能性が当てはまるか一緒に見ていきましょう。

脂肪肝(アルコール性・非アルコール性)

ALTが高くなる原因として、現在最も多く見られるのが「脂肪肝」です。

これは、食べ過ぎや飲み過ぎで使い切れなかったエネルギーが「中性脂肪」という形で肝臓にぎっしりと蓄積してしまった状態。いわば、肝臓がフォアグラのようになっているとイメージしてください。

脂肪がたまりすぎると肝細胞はパンパンに膨れ上がり、その圧力に耐えきれず細胞が壊れてしまうため、中のALTが血液中に漏れ出して数値が上がってしまうのです。

脂肪肝は、その原因によって大きく2つのタイプに分けられます。

  • アルコール性脂肪肝
    その名の通り、長期間にわたる過度な飲酒が原因です。アルコールを分解する過程で肝臓に大きな負担がかかり、中性脂肪が作られやすくなることで発症します。


  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/MASLD)
    お酒をほとんど、あるいは全く飲まない方でも起こる脂肪肝です。食べ過ぎや運動不足による肥満、糖尿病、脂質異常症などが主な原因となります。食生活の欧米化にともない、このタイプの脂肪肝は年々急増しています。


どちらのタイプも、初めは自覚症状がありません。 しかし、脂肪がたまった状態を放置すると、肝臓でじわじわと炎症が進行し、やがては肝硬変や肝がんといった命に関わる病気につながる危険性があります。

ウイルス性肝炎(B型・C型など)

見過ごされがちですが、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス感染も、ALTが高くなる重要な原因の一つです。

これらのウイルスに感染すると、体はウイルスを異物とみなして排除しようとします。その際、ウイルスが潜んでいる肝細胞ごと免疫細胞が攻撃してしまうため、肝臓に炎症が起きて細胞が破壊され、ALTの数値が上昇するのです。

ウイルス性肝炎の最も怖い点は、感染してもほとんど自覚症状がないまま、何十年もかけて静かに肝硬変や肝がんへと進行していくことにあります。

ご自身がウイルスに感染している事実を知らない方も決して少なくありません。 現在は簡単な血液検査で感染の有無を調べることができ、治療法も格段に進歩しています。健康診断などでALTの高さを指摘されたら、一度は肝炎ウイルスの検査を受けておくことを強くお勧めします。

薬やサプリメントによる肝障害

病気の治療で飲んでいる薬や、健康のために良かれと思って続けているサプリメントが、知らず知らずのうちに肝臓に負担をかけ、ALTを上昇させていることがあります。これを「薬物性肝障害」と呼びます。

体の中に入った薬やサプリの成分は、その多くが肝臓で分解・解毒(代謝)されます。この分解の過程で肝臓に負担がかかったり、成分に対してアレルギーのような反応が起きたりすることで、肝細胞がダメージを受けてしまうのです。

原因となる可能性のあるものは、私たちの身の回りにあふれています。

  • 病院で処方される医療用医薬品
  • ドラッグストアで手軽に買える市販薬(風邪薬、解熱鎮痛薬など)
  • 漢方薬
  • ウコン、ダイエット系などの健康食品やサプリメント

もしALTの数値が高かった場合、最近何か新しい薬やサプリを飲み始めていないか、思い出してみてください。 ご自身の判断で急にやめてしまうのは危険な場合もあります。必ず、お薬手帳など服用中のものが全てわかるものを持参の上、医師や薬剤師に相談しましょう。

生活習慣の乱れ(過食・運動不足・睡眠不足)

特定の病気や薬だけでなく、日々の何気ない生活習慣の積み重ねが、肝臓の疲弊を招き、ALTの数値を押し上げているケースも少なくありません。

  • 過食・運動不足
    摂取するカロリーが、運動などで消費するカロリーを上回る生活を続けていると、余ったエネルギーは脂肪となって真っ先に肝臓へ運ばれます。これが脂肪肝の直接的な引き金です。特に甘いジュースやお菓子、脂っこい食事が多い方は注意が必要です。


  • 睡眠不足やストレス
    不規則な生活や睡眠不足、精神的なストレスは、体の様々な機能を調整する「自律神経」のバランスを乱します。自律神経は肝臓の血流や代謝もコントロールしているため、その働きが乱れると、肝機能そのものにも悪影響が及ぶことがあるのです。


これらの生活習慣は、一つひとつは些細なことかもしれません。 しかし、これらが複合的に肝臓へダメージを与えている可能性も十分に考えられます。まずはご自身の生活を振り返り、肝臓に負担をかける習慣がないか見直すことが、ALTを下げるための大切な第一歩となります。

自宅で今日から始められるALTを下げる3つの生活習慣

健康診断でALTが高いと指摘されても、すぐに特別な治療が必要となるケースはむしろ稀です。多くの場合、原因は普段の食事や運動といった日々の暮らしの中に潜んでいます。

つまり、ご自身の生活習慣を少し見直すことが、肝臓をいたわり、ALTの数値を改善するための最も確実な一歩となるのです。

ここでは、ご自宅で今日からすぐに始められる3つの大切なポイントをご紹介します。

食事療法 肝臓をいたわる食べ方と避けるべき食品

ALTを下げる食事の基本は、とてもシンプルです。それは「肝臓に余計な脂肪をためない」こと。厳しい食事制限は必要ありません。まずは月に1〜2kgのペースで、ゆっくりと体重を落とすことを目標にしましょう。

肝臓に負担をかける食べ物を減らし、肝臓が喜ぶ食べ物を増やす、という視点で毎日の食卓を見直してみてください。

【肝臓の負担になるため、なるべく控えたい食品】

  • 糖質の多いもの(お菓子、ジュース類、果物)
    糖質、特に果物やお菓子に含まれる「果糖」は、体内で中性脂肪に非常に変わりやすく、その多くが肝臓に直接蓄積されてしまいます。のどが渇いたときの清涼飲料水や甘い缶コーヒーを、水やお茶に変えるだけでも大きな一歩です。
  • 脂質の多いもの(揚げ物、脂身の多い肉、バターなど)
    脂っこい食事は、それ自体がカロリーオーバーにつながるだけでなく、肝臓での脂肪の合成を促し、炎症を引き起こす一因にもなります。

【傷ついた肝臓の回復を助ける、積極的に摂りたい食品】

  • 良質なタンパク質(大豆製品、魚、鶏むね肉など)
    ダメージを受けた肝細胞が新しく生まれ変わるためには、その材料となるタンパク質が不可欠です。豆腐や納豆、脂質の少ない魚や鶏むね肉などを意識して食事に取り入れましょう。
  • 食物繊維(野菜、きのこ、海藻類)
    食事の最初に野菜や海藻を食べる「ベジファースト」を心がけると、後から食べる糖や脂肪の吸収を穏やかにしてくれます。

運動療法 おすすめの運動と頻度

食事の見直しと並行して運動に取り組むことは、ALTを下げるための両輪です。運動は、肝臓にすでに溜まってしまった脂肪をエネルギーとして燃やす、最も直接的で効果的な方法と言えます。

実際に、現在の体重の7〜10%を減量できると、肝機能の数値が目に見えて改善することがわかっています。

【おすすめの運動】

  • 有酸素運動
    少し息がはずむくらいの「早歩き(ウォーキング)」や軽いジョギング、水泳などが効果的です。目標は、週に合計150分以上。「1回30分のウォーキングを週に5日」のように、生活の中に組み込んでみましょう。
  • 簡単な筋力トレーニング
    筋肉は、体の中で最も多くのエネルギーを消費してくれる場所です。スクワットなどで下半身の大きな筋肉を鍛えると、基礎代謝(じっとしていても消費するエネルギー)が上がり、脂肪が燃えやすく、つきにくい体質へと変わっていきます。

大切なのは、無理なく続けることです。まずはエレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、できることから始めてみませんか。

休肝日の設定と上手なアルコールとの付き合い方

お酒を飲む習慣のある方にとって、アルコールとの付き合い方の見直しは避けて通れません。アルコールの分解は、すべて肝臓が担う仕事です。飲み過ぎが続けば、肝臓は24時間休みなく働き続けることになり、細胞は疲弊し、壊れてしまいます。

まずは、肝臓をゆっくりと休ませる「休肝日」を設けましょう。 週に2日以上、できれば連続してお酒を飲まない日を作るのが理想です。これだけでも、肝臓がダメージを修復し、本来の機能を取り戻すための貴重な時間を作ることができます。

また、お酒を飲む日の「量」も強く意識してください。 一般的に、アルコール性肝障害のリスクが高まるのは、1日あたりの純アルコール換算で男性30g以上、女性20g以上とされています。

【純アルコール20gの目安】

  • ビール(5%):中瓶1本(500ml)
  • 日本酒(15%):1合(180ml)
  • ワイン(12%):グラス2杯弱(200ml)
  • ウイスキー(43%):ダブル1杯(60ml)

もし、すでにお酒が原因の肝臓の病気と診断されている場合は、治療の基本は「禁酒」となります。お酒は適量を守り、肝臓をいたわりながら楽しみましょう。

放置は危険?ALT高値が知らせる将来の病気リスク

健康診断でALTが高いと指摘されても、これといった自覚症状がないため「少し様子を見よう」と考えてしまう方は少なくありません。

しかし、その考えは非常に危険です。 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓からのSOSサインである高いALT値を放置すると、肝臓の炎症が静かに、しかし確実に進行していきます。

その道の先にあるのが、「肝硬変」や「肝がん」といった、命に関わる深刻な病気です。 ご自身のからだが発しているサインに今きちんと向き合うことが、未来の健康を守るための何よりの分かれ道となります。

肝硬変

肝硬変とは、長年にわたる炎症で肝細胞の破壊と修復が繰り返された結果、肝臓全体が硬く、ゴツゴツになってしまった状態です。

ケガをした皮膚が治るときに、かさぶたのような硬い組織ができるのをイメージしてください。 肝臓でも同じように、壊れた細胞を修復するために「線維(せんい)」という硬い組織が作られます。この線維が必要以上に増えすぎて、肝臓本来のやわらかさが失われた状態が「肝硬変」です。

硬くなった肝臓は、血液をろ過したり、栄養を蓄えたりといった大切な働きを十分にこなせなくなります。 その結果、

  • 体がだるくなる(倦怠感)
  • 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸:おうだん)
  • お腹に水がたまって張る(腹水:ふくすい)

といった様々な症状が現れ始めます。 一度肝硬変まで進行してしまうと、残念ながら元の健康な肝臓に戻すことは極めて難しくなります。だからこそ、肝臓がまだやわらかさを保っている段階で、原因にアプローチすることが何よりも重要なのです。

肝がん

肝がんは、肝臓の細胞そのものが、がん化してしまう病気です。 そして、その発生の多くは、肝硬変という土壌の上で起こります。

肝細胞が壊れては再生するというサイクルが延々と繰り返される中で、細胞が分裂する際の遺伝子のコピーミスが起こりやすくなります。このコピーミスが積み重なった結果、やがてがん細胞が生まれてしまうのです。

つまり、ALTが高い状態を放置することは、がん細胞が生まれるための危険な環境を自ら作り出していることに他なりません。

ある研究では、ALT値が基準値を超えている人は、基準値以下の人に比べて肝がんの発生リスクが約14倍も高くなる、という衝撃的な報告もあります。

肝がんも初期にはほとんど症状がありません。 しかし、ALTが高いという「サイン」の段階で脂肪肝やウイルス性肝炎などの原因を突き止め、治療や生活習慣の改善に取り組めば、肝がんへの進行を食い止めることは十分に可能です。

健康診断の結果は、あなたの未来を変えるための、からだからの大切なメッセージなのです。

ALTが高いと言われたら何科を受診すべき?

健康診断で「ALTが高い」という結果を受け取ったとき、多くの方が「何科に行けばいいんだろう?」と迷われるはずです。 自覚症状がないだけに、どこに相談すれば良いか分からず、不安な気持ちになりますよね。

結論からお伝えすると、まずは「内科」、特に普段から通っている「かかりつけ医」に相談するのが最初のステップです。 そして、より詳しい検査が必要と判断された場合には、「消化器内科」や「肝臓内科」といった専門の科へと進んでいきます。

あなたの肝臓からのSOSサインを見逃さないためにも、受診の流れを一緒に確認していきましょう。

まずはかかりつけの内科へ

ALTの数値が高いと指摘されたら、まずはお近くの内科、あるいは普段からご自身の体調をよく知ってくれている「かかりつけ医」の扉を叩いてください。

なぜ最初に内科なのでしょうか。 それは、肝臓の数値は、肝臓だけの問題とは限らないからです。 例えば、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が背景にあるかもしれませんし、普段飲んでいる薬やサプリメントが影響している可能性も考えられます。

内科医は、体全体をトータルで診る専門家です。 ALTの数値だけでなく、血圧や他の血液検査の結果、生活習慣、服用中のお薬といった様々な情報を組み合わせ、原因を多角的に探ってくれます。

まずは内科で相談し、基本的な診察や検査を受ける。 その上で、より専門的なアプローチが必要だと判断された場合に、消化器内科などの専門医へスムーズに繋いでもらう。 これが、原因究明への最も確実で安心なルートです。

専門的な検査は消化器内科・肝臓内科で

内科での診察の結果、ALTの数値が特に高い場合や、より詳しい原因検索が必要と判断された場合に受診するのが「消化器内科」や「肝臓内科」です。

消化器内科は、食べ物の通り道である食道や胃腸だけでなく、肝臓・胆のう・すい臓といった消化を助ける臓器のプロフェッショナル。 特に肝臓内科は、その名の通り、肝臓の病気を専門的に診療します。

これらの専門科では、ALTが高くなっている根本原因を突き止めるため、次のような一歩踏み込んだ検査を行います。

  • 詳細な血液検査
    B型・C型といった肝炎ウイルスに感染していないか、肝臓の組織が硬くなり始めていないか(線維化)などを詳しく調べます。
  • 腹部超音波(エコー)検査
    肝臓に脂肪がどのくらいたまっているか、異常なできものが隠れていないかなどを、お腹にゼリーを塗って機械を当てるだけで詳細に観察できます。
  • 肝臓の硬さの測定(フィブロスキャンなど)
    肝硬変への進行度を、痛みを感じることなく数値で評価できる特殊な検査です。

なぜ、ここまで詳しく調べる必要があるのか。 それは、「脂肪肝」と「ウイルス性肝炎」では、その後の治療や生活で気をつけるべきことが全く違ってくるからです。 原因を正確に診断することが、あなたの肝臓の未来を守るための治療計画を立てる上で、何よりも重要になるのです。

病院で行う精密検査と治療の流れ

健康診断で「ALTが高い」という結果を受け取ると、「これからどんな検査をするのだろう」「もし悪い病気だったら…」と、様々な不安が頭をよぎるかもしれません。

しかし、これは原因を正確に突き止め、あなたの肝臓を守るための治療へ進むための、非常に大切な第一歩です。 クリニックを受診した後の具体的な流れを知っておくことで、少しでも安心して次のステップに進んでいただければと思います。

血液検査で他の肝機能数値もチェック

まず行うのが、ALTの数値を再確認するための血液検査です。 ただし、この検査ではALTだけを見るわけではありません。肝臓の状態を立体的に把握するため、パズルのピースを組み合わせるように、関連する他の数値もあわせてチェックします。

  • AST(GOT)
    ALTと同じく肝細胞に含まれる酵素ですが、心臓や筋肉にも存在します。もしALTだけが突出して高ければ肝臓の病気が強く疑われますし、ASTも同じように高ければ、肝臓以外の原因も探る手がかりになります。
  • γ-GTP(ガンマジーティーピー)
    アルコールとの関連が深いことで知られていますが、実は脂肪肝や薬の影響、胆汁(たんじゅう)という消化液の流れが悪くなったときにも数値が上がります。
  • ALP、ビリルビンなど
    これらは、肝臓で作られる胆汁が、胆管という通り道をスムーズに流れているかを確認するための指標です。

これらの数値を総合的に評価することで、「なぜALTが高くなっているのか」という原因を、より正確に絞り込んでいくことができるのです。 また、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス感染の有無も、この血液検査で同時に調べることが可能です。

腹部超音波(エコー)検査で肝臓の状態を確認

血液検査が肝臓の「働き(機能)」を調べるものなら、腹部超音波(エコー)検査は、肝臓の「見た目(形や構造)」を直接観察するための検査です。 お腹に冷たいゼリーを塗り、超音波を出す「プローブ」という器具を当てるだけで、痛みや放射線被ばくの心配は一切ありません。

この検査では、モニターに映し出される肝臓の様子から、次のような大切な情報がリアルタイムでわかります。

  • 脂肪の蓄積(脂肪肝)の程度
    脂肪がたまると、超音波を強くはね返すため、肝臓が白く輝いて見えます。その白さの度合いから、脂肪の量を評価します。
  • 肝臓の大きさや輪郭
    慢性的な炎症が続くと、肝臓の表面がデコボコしたり、形がいびつになったりします。肝硬変への進行度をみるための重要な手がかりです。
  • しこり(腫瘤)の有無
    肝がんをはじめとする、異常なできものが隠れていないかを、肝臓の隅々まで丁寧に観察します。
  • 胆のうや胆管の状態
    ALTの上昇は胆石などが原因で起こることもあるため、関連する臓器に異常がないかも同時にチェックします。

血液検査という「数字の情報」と、エコー検査という「見た目の情報」。この2つを組み合わせることで、診断の確実性は飛躍的に高まるのです。

診断後の治療方針と期間の目安

血液検査と腹部エコー検査の結果を総合的に判断し、ALTが高い根本的な原因を突き止め、診断を下します。 治療の方針は、原因によって大きく異なります。

  • 脂肪肝(アルコール性・非アルコール性)が原因の場合
    治療の主役は、薬ではなく「ご自身の生活習慣の改善」です。食事の見直しと、継続的な運動療法が最も効果的であり、お薬はあくまでその補助的な役割となります。
  • ウイルス性肝炎が原因の場合
    ウイルスの増殖を抑えたり、体から排除したりするための専門的なお薬による治療が必要です。近年、治療薬は大きく進歩しており、肝臓専門医と連携しながら治療を進めます。
  • 薬剤性肝障害が原因の場合
    原因と考えられるお薬やサプリメントを特定し、中止や変更を検討します。ただし、自己判断で中断するのは危険な場合もあるため、必ず医師と相談の上で方針を決定します。

治療を始めても、ALTの数値がすぐに正常に戻るわけではありません。 特に生活習慣の改善による効果は、数週間から数ヶ月という時間をかけて、ゆっくりと現れてきます。

焦る必要はありません。定期的に通院していただき、検査で改善の度合いを確認しながら、私たちが伴走者となって一緒に治療を進めていきましょう。

まとめ

今回は、ALTの数値が高い原因と、その改善方法について詳しくご紹介しました。

健康診断で示されたALTの数値は、自覚症状のない「沈黙の臓器」肝臓があなたに送る、見過ごしてはいけない大切なSOSサインです。その原因は、お酒だけでなく普段の食事や運動不足といった身近な生活習慣に潜んでいることがほとんどです。放置すれば、将来的に肝硬変や肝がんといった深刻な病気につながる危険性も否定できません。

しかし、必要以上に不安に思うことはありません。このサインに気づけた今こそ、ご自身の肝臓と向き合う絶好の機会です。まずは健康診断の結果を持ってかかりつけ医に相談し、今日からできる生活習慣の見直しを始めてみませんか。あなたの未来の健康は、この小さな一歩から始まります。

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ALT(GPT)が高い場合、肝機能の指標としてγGTPも一緒に上がっていることがあります。飲酒や脂肪肝など原因の整理に役立つため、あわせて確認しておくと安心です。

γGTPが高いと言われたら|原因と下げる方法を医師が解説

この記事は医師の監修のもと作成しています。

監修 和田 蔵人(医師)

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