貧血と言われたら?原因と再検査の目安を医師が解説

貧血と言われたら 原因と再検査の目安

健診で貧血を指摘され、「自覚症状がないけれど大丈夫だろうか」「どんな検査が必要なのだろう」と不安を感じていませんか?成人女性でヘモグロビン値が12.0未満の場合に貧血と診断されるように、貧血は体からの大切なサインです。

この記事では、貧血の定義や主な原因、健診で指摘された場合の再検査の目安、そして適切な治療方法について、医師が詳しく解説します。

貧血に関する正しい知識を身につけ、ご自身の状態に合わせた適切な行動を取ることで、健やかな毎日を送るための一歩を踏み出せるでしょう。

目次

健診で貧血を指摘されたら?知っておくべき3つの基礎知識

健診で貧血を指摘されたら、まずは貧血がどのような状態なのか、なぜ貧血になるのか、そして放置することで体にどのような影響があるのかを知ることが重要です。このセクションでは、貧血の基本的な知識をわかりやすく解説します。

貧血の定義と基準値:何が「貧血」なのか

貧血とは、血液中のヘモグロビンという色素が不足している状態です。ヘモグロビンは、赤血球に含まれるたんぱく質で、肺から取り込んだ酸素を全身の細胞へ運ぶ重要な役割を担っています。ヘモグロビンが減少すると、体の隅々まで酸素が十分に供給されなくなり、倦怠感、めまい、息切れ、動悸といったさまざまな不調が現れると考えられています。

健康診断では、血液検査でヘモグロビンの値が以下の基準値を下回ると貧血と診断されます。

対象者ヘモグロビン基準値(g/dL)
成人男性13.0未満
成人女性12.0未満
妊婦11.0未満

これらの基準値はあくまで目安であり、年齢や体質、医療機関の測定方法によって多少変動することがあります。また、貧血の診断にはヘモグロビン値だけでなく、貯蔵鉄の指標であるフェリチン値も重要です。フェリチン値は、貧血に至る前の「かくれ貧血」ともいえる潜在的な鉄欠乏状態を把握するための鋭敏な指標となります。健診結果で貧血を指摘された場合は、医師と相談し、ご自身の状態を正確に把握することが大切です。

貧血の主な原因3つ:鉄欠乏から隠れた病気まで

貧血の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて次の3つのタイプが考えられます。

  1. 鉄欠乏性貧血
    鉄は、ヘモグロビンを作るために不可欠な材料です。この鉄分が不足することで、ヘモグロビンが十分に生成されなくなり貧血が起こります。貧血の中でも最も頻度が高いとされています。
    鉄分不足の原因はさまざまです。



    • 食事からの摂取不足

    • 月経や子宮筋腫などによる過多月経

    • 妊娠や授乳による需要の増加

    • 胃潰瘍、大腸がん、痔など消化管からの出血


    特に男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、消化管からの出血が原因である可能性があり、その出血源を特定するための精密検査が非常に重要となります。


  2. 出血による貧血(急性または慢性)
    消化管からの大量出血(胃潰瘍、大腸がん、痔など)や、女性の過多月経などにより、体から血液が失われることで貧血になります。少量でも慢性的に出血が続くと、徐々にヘモグロビンが減少し、貧血につながることがあります。


  3. 他の病気が原因の貧血
    貧血は、他の病気のサインとして現れることも少なくありません。

    • 慢性炎症に伴う貧血(ACD): 関節リウマチや悪性腫瘍、慢性感染症などの慢性的な炎症があると、ヘプシジンという物質が増加し、体内の鉄利用が妨げられます。このタイプは、貯蔵鉄が十分にあるにもかかわらず貧血になるため、鉄欠乏性貧血との鑑別には血清フェリチン値の確認が有用とされています。
    • 腎性貧血: 腎臓の機能が低下すると、赤血球の生産を促すホルモン「エリスロポエチン」の分泌が不足し、貧血を引き起こします。
    • 血液疾患: 白血病、骨髄異形成症候群など、血液を作る工場である骨髄に異常が生じることで貧血となる場合があります。
    • 栄養素の欠乏: ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球が正常に成熟できなくなり、貧血につながります。
    • 自己免疫疾患: 溶血性貧血のように、自分の免疫が誤って赤血球を破壊してしまうことで貧血となる病気も存在します。

貧血を放置するリスク:体の不調と重大な病気

健診で貧血を指摘されても、自覚症状がないからと放置するのは危険です。貧血は体からの大切なサインであり、放置するとさまざまなリスクを伴います。体内の酸素不足が続くことで、体に大きな負担がかかり、日常生活の質が著しく低下する可能性があります。

貧血を放置することで、次のような症状が強まることがあります。

  • 疲れやすさ、全身のだるさ
  • めまい、立ちくらみ
  • 動悸、息切れ
  • 集中力の低下、頭痛
  • 顔色の悪化、爪がもろくなる
  • 食欲不振

さらに、貧血の背景には、隠れた重大な病気が潜んでいる可能性も少なくありません。特に男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、胃潰瘍や大腸がん、子宮筋腫など、消化管からの出血や婦人科系の病気が原因となっていることがあります。これらの病気は早期発見・早期治療が非常に重要です。また、造血器の重篤な病気や、急激に進行する貧血の場合には、専門的な治療が必要になることもあります。

貧血は単なる体調不良ではなく、体からのSOSとして真摯に受け止め、放置せずに医療機関を受診することが大切です。

貧血の再検査と治療:医師と進める3つのステップ

健診で貧血を指摘されたとき、「何から手をつければいいのか」と不安に感じるかもしれません。しかし、適切な再検査と治療計画を立てることは、健康な生活を取り戻すための大切な一歩です。貧血は体からの重要なサインであり、放置せずに医師と連携しながら、その原因を特定し、ご自身に合った治療を進めていくことが何よりも重要です。

再検査の目安と適切な受診先:いつ、どの科へ行くべきか

健診で貧血を指摘されたら、症状の有無にかかわらず、できるだけ早く医療機関を受診してください。特に、ヘモグロビン(Hb)の値が基準値を大きく下回っている場合や、めまい、だるさ、動悸、息切れといった貧血症状がすでにある場合は、早急な受診が必要です。

男性や閉経後の女性で貧血が見つかった場合は、特に注意が必要です。これは、生理による出血がないため、貧血の背景に胃潰瘍、大腸がん、痔などの消化管からの出血や、他の重大な病気が隠れている可能性があるためです。

まずは内科、特に消化器内科を受診するのが一般的です。貧血の原因を特定するための一般的な血液検査に加え、必要に応じて胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)といった精密検査まで一貫して対応できます。女性で月経不順や過多月経が貧血の原因と考えられる場合は、婦人科も選択肢の一つです。貧血の原因は非常に多岐にわたるため、より専門的な検査や治療が必要と医師が判断した場合は、適切な専門医へご紹介します。

貧血を詳しく調べる検査内容:血液検査から内視鏡検査まで

貧血の原因を正確に特定するためには、一般的な血液検査だけでは不十分なケースがあります。

  • 詳細な血液検査:ヘモグロビン(Hb)の値だけでなく、赤血球の大きさを示すMCV(平均赤血球容積)、体内の貯蔵鉄量を反映するフェリチンなどを確認します。
    • フェリチン:体内の鉄貯蔵量を把握する上で非常に重要な指標です。貧血に至る前の「かくれ貧血」、つまり潜在的な鉄欠乏状態もフェリチンの値で把握できます。また、フェリチン値は鉄欠乏性貧血と慢性炎症に伴う貧血を鑑別するためにも役立ちます。慢性炎症に伴う貧血の場合、体内に鉄は十分にあるにもかかわらず、炎症によって鉄の利用が妨げられるため、フェリチン値は正常か高値を示すことがあります。
    • MCV(平均赤血球容積):赤血球の大きさを表し、貧血の種類を絞り込む手がかりになります。例えば、鉄欠乏性貧血では赤血球が小さくなる「小球性貧血」の傾向が見られます。ビタミンB12や葉酸が不足すると赤血球が大きくなる「大球性貧血」となることがあります。
    • その他の項目:血清鉄、TIBC(総鉄結合能)、網赤血球数、ビタミンB12、葉酸などの検査も必要に応じて行い、貧血の原因を多角的に解析します。
  • 便潜血検査:消化管からの目に見えない出血がないかを確認します。
  • 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査):消化管からの出血が貧血の原因となっている場合、その出血源(胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなど)を直接観察し、特定するために行われます。特に男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合、消化管からの出血を疑い、これらの検査をおすすめすることがあります。

これらの検査結果を総合的に判断し、医師は貧血のタイプ(鉄欠乏性貧血、腎性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血など)を鑑別し、最適な治療方針を決定します。

貧血の治療法と日常生活の改善:鉄剤治療と効果的な食事

貧血の治療は、その原因によってアプローチが大きく異なります。最も頻度が高い鉄欠乏性貧血の場合、経口鉄剤による治療が原則です。

  • 経口鉄剤治療
    鉄剤を服用することで、不足している鉄分を補給し、ヘモグロビンの産生を促します。体内の鉄貯蔵が満たされるまで、数カ月間継続して服用することが一般的です。治療開始後、ヘモグロビン値が回復しても、体内の貯蔵鉄が十分に回復していないことがあるため、自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従うことが大切です。
    鉄剤の服用初期には、吐き気、便秘、下痢などの胃腸症状が現れることがあります。これは多くの場合一時的なものですが、症状が辛い場合は我慢せずに医師に相談してください。薬の種類や服用方法を調整することで、症状が改善する可能性があります。
  • その他の治療
    鉄欠乏性貧血以外の貧血に対しては、原因に応じた治療が行われます。例えば、腎臓病による腎性貧血であれば、赤血球の産生を促すエリスロポエチン製剤が用いられることがあります。また、ビタミンB12や葉酸の欠乏が原因の貧血には、これらの栄養素を補給する治療が行われます。
    貧血の原因が、胃潰瘍や大腸がん、子宮筋腫などの病気である場合は、その病気自体の治療も同時に進めることになります。稀に、白血病や骨髄異形成症候群といった血液を作る工場である骨髄の病気や、自分の免疫が赤血球を破壊してしまう溶血性貧血など、専門的な治療が必要な重篤な貧血が見つかることもあります。そのような場合は、速やかに血液専門医へご紹介し、連携して治療を進めていきます。
  • 食生活の改善
    治療効果を高め、再発を防ぐためには、日々の食生活を見直すことも非常に重要です。
    鉄分を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
    • ヘム鉄(動物性食品):レバー、赤身肉(牛肉、豚肉)、カツオ、マグロなど。吸収率が高いのが特徴です。
    • 非ヘム鉄(植物性食品):ほうれん草、小松菜などの緑黄色野菜、豆類、ひじき、貝類など。
      また、鉄の吸収を助けるビタミンCを多く含む食品(ブロッコリー、パプリカ、柑橘系の果物など)を一緒に摂ることで、非ヘム鉄の吸収率を高めることができます。
      市販の鉄剤サプリメントの利用を検討している場合は、過剰摂取による健康被害を防ぐためにも、必ず医師や薬剤師に相談してから使用するようにしてください。過剰な鉄は体に負担をかける可能性もあります。

まとめ

貧血は、体からの大切なサインです。健診で貧血を指摘されたら、軽視せずに原因を特定し、適切な治療を受けることが何よりも大切です。

貧血の原因は鉄不足だけでなく、消化管からの出血や他の病気が隠れていることも少なくありません。特に男性や閉経後の女性では、重大な疾患の早期発見につながる場合があります。めまいやだるさといった症状がなくても、放置することで体への負担が増し、日常生活の質が低下するリスクもあります。正確な原因を突き止め、鉄剤治療や食事改善など、医師と相談しながらご自身に合った治療を続けることが回復への近道と言えます。

もし健診で貧血を指摘されたり、気になる症状が続いている場合は、一人で悩まずに早めに医療機関を受診しましょう。専門家と一緒に、体の状態に合わせた治療計画を立てていきましょう。

この記事は医師の監修のもと作成しています。

監修 和田 蔵人(医師)

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参考文献

  • 張替 秀郎. 貧血―診断と治療のアプローチ―
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